サマードリーム - ショートストーリー

釣りを眺めていたのは?

【場所】 海が見下ろせる、長い階段の坂道。セミの声が降り注いでいる。

陽葵 「ねえねえ、汐里! 今日はこの後、友一と一緒に『秘密基地』の跡地に行かない? 探検だよ、探検!」

汐里 「はあ? なんで私がそんな子供騙しの遊びに付き合わなきゃいけないのよ。パス。私は帰ってエアコンの中で読書するから」

陽葵 「えーっ、冷たいなぁ。汐里、この島に来てからあんまり外で遊んでないでしょ? せっかくの夏なんだから、楽しまなきゃ損だって!」

汐里 「……楽しんでるわよ、これでも。静かな環境で、誰にも邪魔されずに過ごす……それが私の理想なの。あんたや友一みたいに、汗だくで走り回るのが全てじゃないわ」

陽葵 「(ニヤニヤしながら)ふーん……。でも、昨日の夕方、友一が防波堤で釣りしてるのを、遠くからじーっと眺めてたのはどこの誰だっけ?」

汐里 「っ!? ……そ、それは! 偶然通りかかっただけ! ほら、あいつ、釣り針を自分の服に引っ掛けたりしてて危なっかしかったから……監視してただけよ!」

陽葵 「あはは! 汐里、やっぱり友一のこと気にしてるんじゃん」

汐里 「気にしてないってば! そもそも、あんな無神経でデリカシーのない奴……。陽葵だって、よくあんなのと約束なんてしたわね。……もっと、マシな男は他にいたでしょ」

陽葵 「(少し空を見上げて)……そうだね。でも、私にとっては友一じゃなきゃダメだったんだ。あの日、あいつが差し出してくれた手が、すごく温かかったからさ」

汐里 「……。……ふん、重たいわね。やっぱりこの島の人間は、どこか浮世離れしてるっていうか……」

陽葵 「あ、汐里、顔が赤ーい! また『暑さのせい』にする?」

汐里 「……うるさい! ほら、さっさと歩きなさいよ。……そんなに言うなら、秘密基地とやらまでついて行ってあげなくもないわ。……その代わり、帰りにかき氷奢りなさいよね!」

陽葵 「やったー! 決まりだね。じゃあ、今すぐ友一を捕まえに行こー!」


放課後で干物!?

【場所】 放課後の教室。窓の外からは、運動部の掛け声と波の音が混じって聞こえてくる。

陽葵 「おーい、友一! 手を止めて止めて! これから汐里と一緒に、例の『秘密基地』まで競争しに行こうよ!」

友一 「競争って……陽葵、外の気温見てるか? 今行ったら、基地に着く前に干物になっちゃうぞ」

汐里 「そうよ。だいたい、なんで私がアンタたちと一緒に、そんな野蛮な真似しなきゃいけないの? 私はこれから図書室に行くんだから」

陽葵 「えー、汐里、さっき『友一が外に行くならついて行ってもいい』って言ってたじゃん!」

汐里 「なっ……! ちょっと陽葵、余計なこと言わないでよ! 私はただ、このバカ(友一)が熱中症で倒れたら寝覚めが悪いって言っただけ!」

友一 「(苦笑して)……はいはい。心配してくれてありがとな、汐里。でも、今日は陽葵がどうしてもって言うなら、ちょっと顔出すくらいならいいけど」

汐里 「……。……まあ、アンタがそこまで言うなら、付き合ってあげなくもないけど。あくまで、アンタたちの監視役としてだからね」

陽葵 「やった! さすが汐里、話がわかるー! 友一、準備はいい? 負けた方は、帰りに売店のアイス奢りだからね!」

友一 「おい、勝手に賭けにするなよ……。ま、いいけど。汐里も、そんなに無理すんなよ? 暑かったらすぐ言えよ」

汐里 「……。……アンタに心配されるほどヤワじゃないわよ。ほら、さっさと行くわよ! 遅れたら置いていくから!」

陽葵 「あはは、汐里の方がやる気満々じゃん! 友一、置いていかれないように頑張って!」

友一 「やれやれ……。俺の穏やかな夏休みは、まだまだ遠そうだな」


神社とラムネと、予感・・・

【場所】 放課後、高台にある「瀬戸神社」の境内。大きな木陰に友一、陽葵、汐里が腰掛けている。

陽葵 「ぷはぁー! やっぱり夏はラムネだよね! 見て見て、友一。ビー玉、綺麗に取れたよ!」

汐里 「ちょっと、はしゃぎすぎ。……っていうか、なんで私の分まで勝手に開けちゃうわけ? 炭酸抜けるじゃない」

友一 「まあまあ。陽葵が開けなきゃ、汐里はいつまでも『開け方がわからない』って睨んでるだけだろ?」

汐里 「……っ! 別に、そんなことないわよ。ただ、この指が汚れるのが嫌だっただけ。友一、あんた後で覚えときなさいよ」

凪咲 「ふふ、相変わらず賑やかですね。友一くんも、これだけ綺麗な花に囲まれていては、暑さも忘れてしまうのでは?」

(拝殿の奥から、涼しげな巫女装束を揺らして凪咲が現れる)

陽葵 「あ、凪咲さん! お疲れ様です! 凪咲さんの分もラムネ、冷えてますよー!」

凪咲 「ありがとう、陽葵さん。……でも、気をつけて。今日の潮風は、少しだけ『あちら側』の匂いが混じっています。あまり遅くまで外にいてはいけませんよ?」

汐里 「……また始まった。凪咲さん、そうやって友一たちを怖がらせて楽しんでるでしょ。そんな非科学的なこと、私は信じないんだから」

凪咲 「あら、汐里さん。でも、あなたのそのブレスレット……さっきから微かに揺れているのは、風のせいだけかしら?」

汐里 「え? ……えっ!? ちょっと、やめてよ! 友一、変なこと言ってないで、さっさと帰るわよ!」

友一 「俺は何も言ってないだろ……。でも、確かに雲行きが怪しくなってきたな」

陽葵 「あ! 友一、見て! 向こうの水平線に、すごく大きな入道雲……。なんだか、10年前のあの日に似てる気がする」

凪咲 「……約束の刻(とき)が、近づいているのかもしれませんね。友一くん。あなたが何を選び、誰の手を取るのか……海も、空も、じっと見ていますよ」

友一 「凪咲さんまで、何を……。まあ、とりあえず雨が降る前に下りようぜ。ほら、行くぞ、二人とも」

陽葵 「はーい! 友一、一緒に走ろ!」

汐里 「ちょっと、待ちなさいよ! ……置いていかないでってば、友一!」

(駆け出していく3人を、凪咲は静かに見守りながら、小さく微笑む)


10年前の夏休み、最後の日。夕暮れに染まった浜辺での一幕です。 まだ幼く、言葉の重みも知らない二人が交わした、無垢で、けれど残酷なほど純粋な約束のシーン。


回想:黄金色の砂時計


【場所】 凪ヶ島・秘密基地近くの浜辺(10年前の夕暮れ)

幼い友一 「……ごめんな、陽葵。明日、本当に行かなきゃいけないんだ」

(友一は足元の砂を、新品の運動靴で何度も蹴る。その横顔は、引っ越しの実感が湧かない不安で歪んでいる)

幼い陽葵 「……うん、知ってる。お父さんもお母さんも、みんなそう言ってたから」

幼い友一 「遠いんだろ? 都会って。船に乗って、電車にいっぱい乗らなきゃいけないんだって。……もう、一緒に虫取りもできないよな」

幼い陽葵 (ギュッと拳を握りしめて、俯いていた顔を上げる。その瞳には涙が溜まっているが、必死に笑顔を作っている)

幼い陽葵 「大丈夫だよ! 友一がどこにいても、私はここにいるもん。この島で、ずっと待ってるもん!」

幼い友一 「陽葵……。でも、いつまで?」

幼い陽葵 「えーっと……じゃあ、10年! 10年経ったら、友一も私もすっごく大きくなってるでしょ? そしたら、またここで会おうよ!」

幼い友一 「10年……。そんなに先のこと、忘れちゃうよ」

幼い陽葵 「忘れないよ! ……ほら、指切り。約束守らなかったら、針千本飲ますんだからね!」

(陽葵が差し出した小さな小指。友一は少し戸惑いながら、自分の指を絡める)

二人 「「ゆびきりげんまん、嘘ついたら針千本飲ます、指切った!」」

幼い陽葵 「これでよし! 10年後の夏休み、またここで待ち合わせ。……約束だからね、友一?」

幼い友一 「……ああ。約束だ。絶対、帰ってくるから」

(沈みゆく太陽が、二人の影を長く、長く伸ばしていく。波の音だけが、その幼い誓いを聞いていた――)


■ 現代へ(モノローグ)

高校生の友一(独白) 「(……あれから、ちょうど10年だ。正直、ただの子供の約束だと思ってた。あの日、陽葵がどんな表情で俺を見送ったかも、半分くらいは潮風に溶けて消えていたはずなのに。……なのに、どうして俺は、吸い寄せられるようにこの島に戻ってきたんだろうな)」


波打ち際の「答え合わせ」

【場所】 凪ヶ島・浜辺(現在)

陽葵 「……ねえ、友一。覚えてる? ここ」

(陽葵は寄せては返す波を見つめたまま、不意に歩みを止める。潮風が彼女の制服のスカートをふわりと揺らした)

友一 「忘れるわけないだろ。あっちの岩陰に、変な形の流木集めて基地だって言い張ってた場所だ」

陽葵 「ふふ、そうだったね。バケツいっぱいにヤドカリ集めて、次の日には全部逃げ出しちゃってて二人で大泣きしたり……」

(陽葵がクスクスと笑う。でも、その笑い声はすぐに穏やかな静寂に溶けていった。彼女はゆっくりと友一の方を向き、まっすぐに彼を見つめる)

陽葵 「……それでね、もう一つ。ここで交わした『一番大事な約束』のこと……友一は、ちゃんと覚えててくれた?」

友一 「…………」

(友一は一瞬、言葉に詰まる。胸の奥が、熱いような、締め付けられるような感覚に襲われる)

友一 「……10年経ったら、またここで会おう、だろ」

陽葵 「(パッと顔を輝かせて)……! 覚えてて、くれたんだ」

友一 「まあな。正直、子供の頃の他愛ない約束だって、自分に言い聞かせてた部分もあったけど。……でも、島に近づくにつれて、どんどん心臓の音がうるさくなってさ。もし陽葵が忘れてたらどうしよう、とか」

陽葵 「忘れるわけないよ。私は……私はね、友一。あの日から一日だって、この約束を忘れたことはなかったんだよ」

(陽葵が一歩、友一に歩み寄る。その距離は子供の頃よりもずっと近い。彼女の瞳には、夕陽と、そして友一の姿だけが映っている)

陽葵 「……ねえ、友一。10年経って、私たちはあの日言ったみたいに『すっごく大きく』なれたかな?」

友一 「どうだろうな。身長は伸びたし、声も変わったけど。……中身はあんまり、変わってない気がする」

陽葵 「私はね、変わったと思うよ。だって、あの頃は『また遊ぼう』っていう意味で指切りしたけど……今は、それだけじゃないもん」

(陽葵はいたずらっぽく、それでいて少し震える手で、10年前と同じように小指を差し出した)

陽葵 「……もう一度、上書き。10年後の今日、ここに帰ってきてくれたご褒美。……今度は、もっと『大人な約束』、してみる?」





友一(主人公)17歳高校2年生10年前(7歳)まで島に住んでいた。
湊 陽葵17歳高校2年生友一と同じクラス。10年前の約束の相手。
橘 汐里17歳高校2年生友一と同じクラス。半年前に都会から転校してきた。
瀬戸 凪咲18歳高校3年生友一たちの1つ上の先輩。神社の跡取り娘。


10年前と今の関係性


友一と陽葵

小学校に上がるか上がらないかの頃、毎日泥だらけになって遊んでいた幼馴染。友一が親の仕事の都合で島を離れる際、浜辺で「10年後の夏にまたここで会おう」と約束。


汐里との関係

10年前の島にはいない。彼女にとって、友一と陽葵の間に流れる「10年前の空気感」は、少しだけ羨ましく、そして疎外感を感じる対象に。


凪咲との関係

当時8歳の凪咲は、幼い友一たちが遊んでいるのを一歩引いて見守っている「近所のお姉さん」。友一にとっては、今も昔も少しだけ背伸びしないと届かない憧れの存在。


プロフィール

桜色しろっぷ

パソコン用ゲーム制作スタジオを運営してる桜色しろっぷと申します。SRPGS Studio製の王道西洋戦記物シミューレーションローププレイングゲームミスタリア戦記 早期アクセス好評配信中!エンジェルナイト好評配信中!unityでmistarslotも開発中//ストア公開中。 #ヴァンパイアサバイバー愛好会 No.042。合同制作スタジオ。

運営団体:桜色しろっぷ について

桜色しろっぷは、主にPCゲーム(美少女ゲーム・ノベルゲーム)の企画・制作を行っているブランド/グループです。

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